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椎間板ヘルニアについて

正しい理解と
より良い治療を受けるために 2

大阪医科大学
整形外科学教室
特務教授 金 明博 先生

質問6 手術にはどうような方法があるのですか?

質問7 鍼灸院や整骨院の治療で「治る」のですか?

質問8 最終的に椎間板ヘルニアは手術しなくてはいけないのですか?

質問9 低侵襲手術の効果は、従来からの手術方法とどう違うのですか?

したがって、できるだけ手術後の痛みを少なくしたい、入院期間を短くしたい患者さんにとってはメリットがある手術方法と 言えます。しかし逆に言えば、術後の痛みは術後数日間の違いであり、入院期間も数日の違いしかありません。

(ちなみに当院での椎間板ヘルニアの入院期間は7-10日間です。手術翌日から歩行は許可しています。最近読んだアメリカの文献ではなんと従来法、低侵襲法とも0.3-0.4日間!の入院期間で、差はありませんでした)。

低侵襲手術は狭い術野での手術となるために手術手技が相対的に難しくなり、個人的な経験上は手術時間が延長するとともに、神経組織を包む硬膜や神経の損傷と再手術の確率が高くなります。両者間の違いは、同じ川を渡るのに大きな橋をかけるか、細い丸太をかけて渡るかの違いとでもいえるでしょう。どの手術方法を選択するにしても、最終的な操作は椎間板ヘルニアを摘出し神経組織の圧迫を解除することであり、術式間の効果の違いは術後数日間の患者さんの術後疼痛の程度、言いかえれば快適性の違いということになります。

私自身は現在、医学論文の報告では内視鏡下手術を代表とする低侵襲手術と従来法との間に手術成績の差が見られないこと、個人的な経験では低侵襲手術の再手術率が高かったこと、自分自身は従来法の手術手技に自信があることなどから、現在は小切開用の開創器と拡大鏡を使用した手術を行っています。ちなみにこの場合の皮膚切開は内視鏡とほぼ同じ2 cmです。

いずれにしても一番大切なことは、患者さん自身が信頼できると判断した医師と手術の適応に関し十分に相談し、手術を行う際には術式に関してはその医師が最も自信のある方法で行ってもらうことです。医療で最も大切なのは安全かつ確実なことであり、術後の一時的な快適性は二の次と考えるべきでしょう。

質問10 手術後の再発はどの程度するのですか?

腰椎椎間板ヘルニアの手術後の患者さんが、再度同じ部位の椎間板ヘルニアに対する手術を受けた場合を再発とすると、手術後5年までの再発率は4-15%程度と言われています。しかし再度症状が出現し画像検査で同じ部位の椎間板ヘルニアが確認された場合でも再手術にまでは至らないことも多く、このような軽症例も再発とするならば、実際の再発率はもう少し高いかもしれません。再発に至った場合でも保存的治療の効果は期待できますし、また再手術は初回手術よりもやや難しくなりますので、再手術の適応は初回手術以上に慎重に行うべきです。

“以上、腰椎椎間板ヘルニアに関し、日常の診療において患者さんから多く寄せられる質問にお答えする形で、私自身の意見も加え説明させていただきました。腰椎椎間板ヘルニアは数多くの腰痛を引き起こす疾患の一つに過ぎません。また同じ腰椎椎間板ヘルニアと診断されても個々の患者さんで状況は異なり、ある意味オーダーメードの診療が必要なのは言うまでもありません。頑固な腰痛や、腰痛のみならず下肢の症状を伴う場合には、まず早めの整形外科受診をお勧めします。”